#14 囲炉裏を囲み、物語を継ぎ足す。鎌倉にある元料亭の宿
鎌倉ゲストハウス
神奈川県鎌倉市/【閉業】ゲストハウス文化の記録として掲載
鎌倉ゲストハウス
神奈川県鎌倉市/【閉業】ゲストハウス文化の記録として掲載
ゲストハウスは、別の用途で使われてきた建物を活用するケースがほとんど。そのなかで、前の持ち主が大切にしてきた想いを受け継ぎながら、自分たちの新しい物語を重ねていく宿に出会うことがあります。まるで秘伝のタレのように、時間とともに味わいを深めていく、その姿が私はすごく好きです。
2010年7月に誕生した鎌倉ゲストハウスも、まさにその想いのバトンが素敵な宿のひとつ。日本古来の木造建築を手がけてきた宮大工さんが、料理が得意な妻をはじめとする家族のためにと、自宅を兼ねた料亭として、この建物をつくったそうです。
輪になって笑顔で過ごした光景が目に浮かぶ立派な囲炉裏や、本来は1軒に1本とされる大黒柱が、天然の秋田杉で10本も設けられているところなど、建物の随所から家族への想いが伝わってきます。
そのバトンを受け取り、さらに物語を深めるようにゲストハウスを運営しているのが、オーナー夫妻の岡村 拓さんと夏代さん。「タクさん」と「ナツさん」の愛称で旅人たちに親しまれるおふたりは、この場所で子育てをしながらゲストハウスを営んでいました。
囲炉裏がある部屋を談話室として開き、寒い季節には囲炉裏に火を焚べて、お餅や魚を焼いたり、鍋をしたり、熱燗を温めたり。囲炉裏を中心に、あたたかい交流が自然と生まれていました。
タクさんが料理好きということもあって、共有キッチンの調理器具はかなり充実。宿の半地下には、夜はBAR、朝はベーグル屋が開店し、宿泊者たちが朝食を楽しんでいました。
囲炉裏を囲む交流が醍醐味だっただけに、コロナ禍の影響を強く受けたのか、惜しまれながらも2022年12月に閉店。だけど、この場所がつないでくれた物語は、きっと今も多くの旅人のなかで、少しずつ味わいを深めながら育ち続けているのではないでしょうか。

photo by FootPrints

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