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特集|KEYS INTERVIEW 01

メディア「MATCHA」青木 優さんに聞く、世界から見た日本のゲストハウスの今。中長期滞在を導く要素“ゲーム性”とは。


    
世界200カ国以上から注目を集め、月間約427万の閲覧数を誇る、訪日外国人観光客向けWebマガジン「MATCHA(マッチャ)」。その運営会社である「株式会社MATCHA」代表取締役社長の青木 優(あおき ゆう)さんに、ゲストハウスに関連するキーパーソンと対談させていただく特集「KEYS INTERVIEW」のお一人目としてお話を伺ってきました。
  
青木さんは、約7カ月間の世界一周を経て、2013年12月に「株式会社MATCHA」を設立。2014年2月にWebマガジン「MATCHA」を開始し、今では10言語でメディアを展開しています。2017年6月には、内閣府クールジャパン・地域プロデューサーに就任。2017年7月には、「株式会社 星野リゾート」と資本業務提携を実施。現在は東京の浅草にオフィスを構え、月3〜4回ほど地方へ出張し、さまざまな企業・県・自治体と連携して、日本の観光情報を海外へ発信しています。
  
そんな青木さんの視点から、日本のゲストハウスは世界に今どう捉えられているか?そして今後の発展に向けて必要な要素は何か?をお話しいただきました。
  
  
青木さんにとって、日本のゲストハウスとは?
_何が起こるかわからない、価値観の広がりをくれる場所

  
だり:
初めてお会いしたのは、2015年に渋谷ヒカリエで1度だけ開催された「地域と生きるゲストハウスサミット」でしたね。ブログからスタートしてメディア化されたり、ご自身の原体験を大切にされていたり。サイトの規模が全く異なるので恐縮ですが、あのとき青木さんのプレゼンをお聞きして共感できる点が多かったので、以来、勝手ながら親近感を持ってご活躍を拝見していました。
   
「地域と生きるゲストハウスサミット」はマルシェやトークイベントなどで構成され、3日間開催されました
  
だり:
青木さんは、世界一周の際に、海外のゲストハウスに数多く泊まられたそうですね。ゲストハウスとインバウンドは密接な関係にあるので、きっと国内についてもお詳しいと思うのですが、日本のゲストハウスはどれくらいの頻度で泊まっていますか?
  
青木さん:
2泊3日の出張があれば、少なくとも1泊はゲストハウスに滞在するようにしています。ゲストハウスには、地域のキーマンや海外にオープンな人がいることが多くて、その出会いが自分の価値観を広げてくれるし、仕事にも還元できるから、定期的に宿泊しているんです。
  
ゲストハウスだと、初対面なのに一期一会の気軽さからか人生相談になったり、よく顔を合わせる友人や知人だと踏み込みにくい身の上話も明かせてしまうので面白いですよね。そんなふうに何が起こるかわからないから、ゲストハウスって結構好きです。
  
だり:
とても共感できます。ホテルや旅館と比較するとゲストハウスは他者との接点が多いから、何が起こるかわからないハプニング度合いが強くて、面白いですよね。
  
  
訪日外国人は日本のゲストハウスをどう捉えているか?
_安くて交流できる宿、だけでなく、旅の始まりにある宿へ

  
だり:
ご自身のメディアの反響や、週に1度実施されているユーザーヒアリングなどを通じて、日本のゲストハウスは世界からどう捉えられていると感じていますか?
  
ユーザーヒアリングは、オフィスの一室またはランチをしながら実施するのだそう(写真提供:MATCHA)
  
青木さん:
価格に対してクオリティが高い、そういう意味でレベルが高い、と認識されていると思います。ゲストハウスの宿泊費の安さと交流できることに良さを感じている方が多いですが、安価だからといって、そこにユーザーの所得の大小は関係なくて。実際に、ゲストハウスで偶然出会った人の職業がドクターだったり、ゲストハウスのカウンターで三ツ星レストランを予約している人を見かけたこともありました。
  
今後は、安さと交流だけじゃなく、もう一歩違った良いイメージを醸成できたらいいなとも思っています。ゲストハウスは、ホテルや旅館より生っぽい情報が手に入りやすいので、そこを強みにしながら、新たなニーズをうまく満たす仕掛けができたらいいですよね。日本らしさや地域らしさが感じられたり、街の中心的な存在となって宿から旅が始まるような、そういったものを。
  
浅草の何気ない日常の中、珍しそうに露店の食品サンプルを眺める海外ゲストの様子(写真提供:MATCHA)
  
  
日本のゲストハウスで高まりつつあるニーズは?
_ファミリーで一室に泊まる。個室の需要

  
だり:
最近は、訪日外国人からどういったゲストハウスの利用ニーズが高まっていますか?
  
青木さん:
ファミリー層の個室需要が高まってきましたね。今までビジネスホテルで何室かに分かれて泊まっていたファミリー層が、ゲストハウスなら家族みんなで一室に安く泊まれることが多いと気付き、シフトしているようです。
  
だり:
へえ、なるほど。最近ゲストハウスはどこも個室の割合が増えていますよね。ドミトリー(相部屋)に慣れていない日本人ユーザーの新規開拓に適していて良いなとだけ思っていたのですが、海外旅行者の個室ニーズも高まりつつあるとは興味深いです。
  
「地獄谷の猿が可愛かったね」など、家族で同室なら思い出に浸りつつ眠りにつけますね(写真提供:MATCHA)
  
  
今後、日本のゲストハウスにとって必要なことは?
_中長期滞在に対する戦略。“ゲーム性”をつくること

  
青木さん:
日本人の旅行の仕方って結構詰め込み型で、長くて2泊3日じゃないですか。でも海外の旅行者は、場所が良ければ1〜2週間は滞在する。だけど、中長期滞在を狙って具体的な戦略を仕掛けている地域は、日本ではまだ多くない。なので、ゲストハウスが率先して中長期滞在の窓口になれたらいいんじゃないかなと思って。
  
そこで改めて、中長期滞在したくなる地域の共通点って何だろう?って考えていたんです。で、大切な要素は6つあるって気付いて。1つ目はコンパクトシティ、なんでも揃っていること。2つ目は食のバラエティ。あと基本的なところで、人、言葉、景観。そして、最後が“ゲーム性”です。
  
だり:
意外なキーワードですね。“ゲーム性”とは?
  
青木さん:
今日より明日、明日より明後日、その場所にいることで、失敗や成功を経験しながら何かが進化していく。わかりやすい例は、スキーやスノーボードですね。ある時はうまく滑れて、ある時は転んで。でも、日ごとに上達していく。それが中長期滞在の決め手の1つになるんじゃないかって思っています。
  
2018年7月、ニュージーランドでスキー滞在をした際に、その要素を痛感したといいます(写真提供:青木 優)
  
  
中長期滞在を導く要素“ゲーム性”において、重要なことは?
_“体験”ではなく“習得”。そして実体験から自分ゴト化

  
だり:
確かに私の地元の和歌山でも、サーフィンやスキューバダイビングをきっかけに長期滞在をしたり移住したって人もいますね。と言っても、長期滞在をする人の母数自体が少ないので、レアなケースではありますが。
  
青木さん:
そうなんです、日本人はそもそも中長期滞在の経験のない人が多い。だから、さっきの6要素のうち、意外と日本で見過ごされがちなのが“ゲーム性”だと思っていて。でも、それって最近流行っている“体験”では薄いんですよね。中長期滞在に重要なのは“習得”。“体験”だけじゃ、知ったつもりになって消費されて終わっちゃう気がする。それより、その場所にいたからこそ人生が変わったという経験を、いかにつくるかが大事だと思うんです。
  
だり:
なるほど、面白いですね。例えば、数時間だけの陶芸“体験”で終わらせず、後継者のいない伝統的な陶芸家さんのもとで数カ月間や数年間かけて技術を学ぶ“習得”付きの中長期滞在プランとして打ち出せば、もしかしたらいつか継業につながるかもしれない。そう考えると打ち出し次第で、地域の未来も広がりそうですね。
  
あと、移住希望者にとって何を生業とするか?は常に課題となりがちなので、手に職を付けるきっかけにもなったらいいですね。そうすれば、好きな場所を選んで暮らすという選択肢が、より多くの人にとって身近なものになるかもしれない。もちろん、そこまでいくのは簡単な話ではないですが、そうやって“ゲーム性”を突き詰めたら面白いことになりそうですね。
  
スタッフさんと談笑中の青木さん。フラットな社風が素敵でした。現在、新メンバー募集中だそうですよ!<br>
  
青木さん:
ゲストハウスには、人と人をつなぐ・地域の情報を届けるといった強い特徴があるので、そこに“ゲーム性”という新たな要素が掛け合わされば、もっと面白いことができそうです。現地の資源を活かそう、資源がないならつくろう、という前向きなスタンスを大事にしながら展開できたらいいですね。
  
そのためにも必要なのは、まず僕ら日本人が海外や日本各地を訪れて、積極的に中長期滞在を経験することじゃないかなって思うんです。そして実体験の単なるコピーじゃなくて、そこから得られるエッセンスを自分ゴト化して、今度は自分が発信者となって誰かに届けようとすることが大切ですね。
  
だり:
青木さん、貴重なお話を本当にありがとうございました!
  
2019.02.28